葵わかなさんと佐藤寛太さんのW主演ドラマ『結婚するって本当ですか?』の主題歌『lvy lvy lvy』やアニメ『鬼滅の刃遊郭編』の主題歌『残響散歌』のように、格好良かったりポップで明るい楽曲も多く見られるようになった女性アーティストAimerさん。
そんなAimerさんの楽曲たちですが、ここ最近に入り、原点ともいうべきダークサイドの楽曲も増えてきましたね。
その一つとしてリリースされている最新シングル『escalate』。
本記事では、Aimerさんの楽曲『escalate』の魅力や楽曲で描かれる歌詞の意味・世界観、曲調・音楽性を筆者独自の見解で解説していきます。
Aimer『escalate』のwiki風概要
出典:https://www.thefirsttimes.jp/
アニメ『NieR:Automata Ver1.1a』オープニング主題歌としても起用された、女性アーティストAimerさんが歌う『escalate』のwiki風概要はこちらです!
楽曲名:escalate(えすかれーと)
アーティスト:Aimer
リリース:2023年3月1日
収録形態:シングル(21th)
作詞:aimerrhythm(作詞時のAimerさんの別名義)
作曲:春尾ヨシダ
編曲:玉井健二・大西省吾
レーベル:SACRA MUSIC
タイアップ:『NieR:Automata Ver1.1a』OPテーマ
コアなAimerさんのファンなら、『Deep down』に続いて、また続々させられた原点回帰の楽曲という印象が突き刺さったのではないかと思えるほど、ダークサイド寄りな印象を伺わせるAimerさんの21thシングル『escalate』。
この楽曲はアニメ『NieR:Automata Ver1.1a』OPテーマとしても起用されていますが、その世界観を彷彿するような楽曲であり、筆者自身、初めてescalateのMVを観て衝撃を受けました。
もちろん、アニメの世界観を描いた結果だと思いますが、そのことを差し引いても、常々筆者が呼称している『闇との共有』が似合うAimerさんらしさ全開の楽曲ですよね。
イントロからビンビン伝わるダークサイドな曲調・音楽性に加え歌詞に登場する
- 仮初の確かな希望
- 太古へ祈って
- 抗った果の結末
- 信じたい未来へ巻き戻して
- 繰り返す痛み
など、挙げたらキリがないほど、天国なのか地獄なのかどっちつかづのフレーズが多数ちりばめられているのが実に印象的!
ただ闇を並べているだけでなく、芥川龍之介の名作『蜘蛛の糸』のように、闇から『癒やし・気づき・教え』というような一筋の光のような要素を差し込む巧妙さは、Aimerさんの最大の魅力だと筆者は考えています。
筆者自身、そういった巧みな演出を施してくれるアーティストとして、Aimerさんのことを『闇の共有者』と呼称しているわけですが、今回の『escalate』も、そんなAimerさんの魅力がたっぷり詰め込まれています。
誰しも時に自分が許せなくなることもあるでしょうし、あまり責め過ぎると息苦しくなってしまうものです。
そんな複雑な心理描写を巧みに描いてちょっとした逃げ道や気付き・教え(光)を映し出すことで、なにか偶像崇拝に救われるかのような世界観さえ覗かせてくれる…
それこそが、今回の『escalate』の最大のポイントではないかと筆者は考えています。
誰もが大なり小なり抱えている感情にダイレクトに寄り添ってくれる楽曲だからこそ、多くのファンから高く支持されていく…
具体的なところに関しては、後ほど歌詞の意味・世界観、曲調・音楽性の項目でそれぞれの視点から解説していきますが、escalateは、そんなAimerさんの真骨頂ともいうべき楽曲ですので、ぜひ、みなさんも一度聴いてみてください。
※Aimerさんが歌う『escalate』のMVのリンクを下記に貼っておきますので、気になる方は、ぜひクリックして御覧くださいね。
ハスキーボイスが演出する『蜘蛛の糸』の世界
先程、Aimerさんの『escalate』について作家・芥川龍之介の名作『蜘蛛の糸』のようと評しましたが、先日ご紹介したSennaRinさんの『melt』についても蜘蛛の糸という表現を用いてご紹介しています。
確かに、どちらも印象的には蜘蛛の糸ですが、両者の描き方はまるで異なります。
SennaRinさんの『melt』がシンフォニックを巧みに使い魅せた『蜘蛛の糸』であり、どちらかというと『静寂から喧騒』を描く中で魅せた光を差し伸べる癒やしのサウンドでした。
一方、Aimerさんの『escalate』は彼女のハスキーボイスとそれに見合った音楽性・歌詞構成の妙が描く『蜘蛛の糸』であり完全にダークサイドがメイン。
もちろん、Aimerさんのescalateも光や存在しますが、SennaRinさんのmeltとは大きく異なり闇があってこその光というまるで異なる描き方でありながら、Aimerさんならではのハスキーボイスがなければ醸し出せない世界観です。
このような演出方法ができるのも、過去に高音を主体とした宇多田ヒカルさんやMISIAさんのような音楽を目指しつつも声を壊し苦しい思いを経験する中で、Aimerさん自身が今のスタイルを確立されたからこそなのでしょうね。
苦しさや痛みを知り、その中で立ち上がって自分流のスタイルを確立してきたAimerさんが、自身のハスキーボイスを巧みに使い、誰にもできない闇との共有をもたらす素晴らしいサウンドを創り上げてきた…
escalateなその真骨頂のような楽曲であると筆者は考えています。
確かに、アニメ『鬼滅の刃・遊郭編』の主題歌としても大ヒットをもたらした『残響散歌』も先日ブログで筆者が春ならではの楽曲としてご紹介した『花びらたちのマーチ』も、実に素晴らしいAimerさんの楽曲であることに違いありません。
ただ、Aimerさんの原点ともいうべき『闇を孕んだ中での共有と癒やし』、すなわち『闇との共有』を抱かせる楽曲であり魅力的だと『escalate』を聴いたコアなファンほどそれに似た感情を心の何処かで抱いているのではと筆者は感じています。
もちろん、人の感情なんて千差万別ですし、全く違う感想を持ったコアなファンもいらっしゃると思いますが、間違いなくAimerさんのハスキーボイスがもたらす演出力の高さは『escalate』の中でも存分に体感でき、だからこそ高い支持を得ているはず…
ぜひ、ハスキーボイス全開で心に響く演出を繰り出すAimerさんの『escalate』の世界観を存分に楽しんでみてください。
そして、Aimerさんにしか描けない蜘蛛の糸の世界がどんな音楽性・歌詞の世界感を描いているのか体感してみると、より『escalate』の奥深さに気づくことができるのではないかと思いますよ。
escalateの歌詞の意味・世界観
闇との共有を孕むAimerさんらしさ全開な楽曲『escalate』。
闇との共有を孕ませているだけあって実に謎めいたフレーズのオンパレードですよね。
英語フレーズも随所で入っていて実に興味深い歌詞となっていますが、全体的にどのような意味や世界観が描かれているのでしょうか?
では、早速、escalateの歌詞の意味・世界観を筆者の偏見ではありますが解説していきますね。
痛みと悲しみを伴う意味深だらけの歌詞
今回の楽曲タイトル『escalate』を辞書で調べてみると、『少しずつ拡大していく、激化していくという』と意味が掲載されていますが、正直このタイトルだけでは、『何が激化していくのか?』筆者自身不思議に感じていました。
そして、冒頭にある
『who sings this song about us pain and sorrow』
という歌詞が、これまた実に意味深な意味を持っていて、その世界観に引きずり込まれていくのです。
ちなみに、この英語歌詞を翻訳すると『私たちの痛みと悲しみについてこの歌を歌うのは誰ですか』という意味合いになります。
いきなり痛みや悲しみが出てくるあたりがまさに闇との共有を得意とするAimerサウンドならではの歌詞ですよね。
さて、話を戻しますが、このescalateに登場する主人公(もしくは別の登場人物たち…)は何かしらの深い痛みと悲しみを背負った人物なのだろうと想像できます。
その上で、次の歌詞を見ていくと、
『鏡映しの業を済ましたふり繕って見つめてた
繰り返す痛み未だ知らぬ憧れthe weight of my sin nails me down
(和訳:私の罪の重さが私を釘付けにする)足掻いても』
と続いていきます
おそらく、この人物たちは、何かしらの罪を犯してしまい、その罪悪感に苛まれ痛み・悲しみながらもがいているものの、そのモヤモヤから解き放されずに苦しみ続けているということなのでしょう。
例えば、交通事故などで誰かを死なせてしまった場合、刑事事件としての罪を償ったとしても、誰かを死なせてしまったその罪の意識から一生逃れることができず苦しみ続けるなんて話も耳にします。
まさにescalateで描かれている痛み・悲しみはその罪から来る目に見えない苦しさの結果なのかもしれませんね。
まぁ、交通事故で誰かを死なせてしまうなんてことは、そんな簡単に発生するような話ではないと思いますが、大なり小なり罪(カルマ)は誰にでも発生する話であり、真面目な人ほど、その罪の意識に苛まれ心が痛くなり苦しむものです。
もし、このescalate冒頭の歌詞が、主人公云々関係なく一般社会と照らし合わせ誰にも起こりうる話として綴っていたとするなら、痛みと悲しみを背負わせた実に意味深な歌詞と言えるでしょうね。
偶像崇拝の正体
実に意味深な歌詞が綴られたescalateのAメロに続いてBメロも『偶像崇拝』という謎のワードが織り込まれ、第一印象から奥深いなにかを感じさせられます。
そこで、いろいろ歌詞を紐解いていくと、すごく考えさせる内容であることがうかがえます。
さて、気になるBメロの歌詞(英語歌詞は()内に和訳も入れてあります)がこちらです!
『is it the future faling (それは未来の崩壊なのか)
偶像崇拝みたいだ
微かな不安の足音を
despair of all(すべての絶望)
emptiness follows you here this never-ending war
(ここでは空が君を追う終わらない戦争)』
まず、それは未来の崩壊なのかといきなり突きつけてきますが、ここで表現されている『それ』とは一体何を指しているのでしょうか?
あくまで、筆者の見解ですが、おそらくAメロで表記された人間が起こした闇や罪(カルマ)のことを指しているのでしょう。
ただ、闇や罪であり崩壊なのかという部分まではまだ理解できますが、『偶像崇拝みたいだと続くのはどういうことなのか?』と、つい首をかしげてしまいます。
そこで、筆者はいろいろ考えてみたのですが、おそらく、この偶像崇拝には2つの意味合いが存在するように思われます。
1つ目は、一度、自身の傲慢・怠慢な態度によって犯してしまった罪が、どんなに償っても永遠に許してもらうことができず、咎められ続けるのではないかと不安に駆り立てられる恐怖心からの解放を願ったもの。
まぁ、多少の過失などは誠意を持って謝罪したら流石に許してくれるでしょうけど、例えば戦争・紛争や意図的な殺傷事件など、人の命に関わるような大罪となれば話は変わります。
おそらく遺族はあなたを永遠に許してはくれないでしょうし、いくら反省しても時既に遅しで、永遠にその罪から逃れることができず苦しみ続けてしまい、結果として何かにすがるように偶像崇拝してしまうのでしょうね。
2つ目は、自身に対する戒めの気持ちから引き起こされる懺悔的な意味合いという考え…
罪を犯した本人は、そのことに深い謝罪と後悔をしていますが、謝罪する相手がおらずどうすることもできない場合、神に深い懺悔をすることで心の解放を求めることがあります。
自分自身の犯した過ちは決して許すことはできないけど、謝ることで少しでも救われたい気持ちからの偶像崇拝なのかもしれません。
このように、escalate1番Bメロの歌詞に登場する偶像崇拝の正体を探っていくと2つの心理状態が読めるのです。
まぁ、いずれにしても、目に見えない何かによって自分自身を縛り付けてしまっていることには違いないと思いますが…
そして、この偶像崇拝によって、ときに、人類がどんどんおかしな方向に突き進もうとしてしまっているという最悪な状況を『絶望』というワードで指し示しているのかもしれないと、筆者はなんとなくではありますが考察しました。
『赦せない』とescalateさせたものとは?
さて、サビに入り、
『赦せなくてescalateしてescalateして…』
という歌詞がやってきます。
許せない感情がどんどんエスカレート(激化)していくことの前触れともいうべきなのでしょうか…
この赦せない感情というのは、
- 罪に対する懺悔の気持ち
- 罪から逃れたいけど逃れられない不安の気持ち
というあなたを縛る罪から発せられる何かなのだと思います。
そこまで責められてもいないのに自分でどんどん追い詰めてさらに苦しくなっていく…
そんな情景が映し出されているような印象を受けます。
さらに続けて、サビの歌詞では、
『pray in my name』
というフレーズが登場します。
翻訳すると『私の名前で祈って』という意訳になりますが、その直後に
『太古に祈って、折れては繋いで…』
と、意味深なフレーズが続いていきます。
正直、初見では何がなにやらさっぱり意味不明でした。
しかし、何度もこの楽曲の歌詞を読み返していくうちに、ある考えが浮かびました。
それは、私=人類を意味し、太古の時代から繰り返して起こされる傲慢かつ身勝手な紛争・戦争を罪と捉え、二度と引き起こさないように祈っているというものではないかと、筆者は考えました。
もちろん、単純に個人の傲慢さ身勝手さや過失が招いた何かしらの罪や後悔という部分も加味されているとは思いますが、話はそれで終わりではなく、人類が何一つ反省できず引き起こし続けている命への冒涜をテーマに歌っているのでしょう。
いつの時代でも引き起こされている身勝手な紛争や戦争によって、罪なき人の命を殺めてしまう…
その罪を背負いきれず逃れたいという思いと、なんとか罪を償いたいと思う後悔の念が合わさり、『わたしの名前を使って太古の時代から続いていくこの紛争・戦争という罪から、多くの命が救われてほしい』と願った…
escalateはこのような、果てしなく壮大なテーマであり、ある種哲学的な話でもあるのかもしれません。
そのことをサビの部分で痛感させられ、一部分だけを切り取ると、全く意味のがわからなくなる世界観が描かれているのだと筆者は感じました。
話がずれましたが、いずれにしてもサビで『escalate』してと、連呼して許せない感情をスパークさせているものとは、
『太古の時代から繰り返されてきた傲慢な争いによる命への冒涜という罪から開放されたい思いと懺悔への気持ち』
であることに違いはないと思われます。
その上で、戦争により平和を勝ち取ると言いながらも、結果として、因果応報の理念にそって、人類に平和は訪れず不安がescalateし、不幸の連鎖として恐怖が突き刺さっていくのではないでしょうか。
このような感情が、後に続いていく、
『again and again and again(何度も何度も) 螺旋のように』
というフレーズにかかっていくのだと筆者は考えています。
人類は、傲慢・差別・いじめ、文化・風習の違いなど、様々な状況によって紛争・戦争という醜い争いという罪を、いつの時代でも引き起こしてきました。
もし、人類で争いが無くなれば、
- 争いによる人の命への殺傷
- 人の命への冒涜から生まれる罪を背負えず恐怖に慄く必要性
- 罪から開放されるために、太古の時代から命るつける必要性
というった、これまで螺旋のごとく続いてきた負の連鎖から開放されるはず…
そのような訴えが、サビの最後に紡がれる、
『なぜ戦い続けるの? まだ捨てきれない物は
仮初か確かな希望かふれる針』
という歌詞にもかかってきているように思います。
要は、自身の傲慢さやプライド・文化・風習を捨てきれずに不毛な争いを続け、人の命を永遠に傷つけ合い、その罪に苛まれ続ける絶望の社会を望むのか、それとも不毛な争いは止めて許し合う平和な世の中を創るのかという話なのでしょう。
くだらないアンデンティティを捨て友好を持つことさえ出来れば、誰も傷つくことはないのだけど、そんな簡単に捨て去ることなど今の人類には到底できる芸当ではないから、不毛な争いが生まれ自ら首をしめる結果となってしまうのです。
まぁ、何百年何千年と持ち続けてきた思考などそう簡単に拭えるわけもありませんし、もうしばらく負の連鎖は時代を超えて続いてしまうのかもしれませんね。
まさに人類誕生したその瞬間から持ち続けてしまった壮大な闇を『escalate』の歌詞を通じて痛感させられたような気がした次第です。
壮大な闇(罪・カルマ)から見える発見・教え・救い
Aimerさんが歌う『escalate』の歌詞は、はっきり言って闇が深すぎて、とても一人では背負いきれないような壮大なテーマが描かれていると、今回改めて解析し痛感させられました。
ただ、何度も言いますが、Aimerさんの楽曲は、聴き手を深い闇に突き落として終わるようなことはありません。
闇を突きつけながらも共有をもたらし、最後には発見や教え・救いをもたらしてくれるのです。
そういった心の浄化や解放みたいなものがちゃんと用意してあるからこそ、Aimerさんの楽曲は多くのファンに支持されていくのでしょう。
さて、話を戻しますが、当然、今回の『escalate』にもちゃんと発見や教え・癒やしといった心の浄化や解放のような歌詞が用意されています。
そのフレーズが、特に2番の後半に登場する
『I must near to break down Release me I’m in pain(私は壊れるのに近づかなければなりません私を解放してください私は痛みを感じています)
信じ合える世界へ 書き換える 今』
というフレーズに集約されているような気がします。
このフレーズは、パッと見た感じ罪悪感や罪にさいなまれる痛みから解放を願っている苦しい状況を訴えているようにも感じますが、最後の『信じ合える世界へ書き換える今』という歌詞がすべてを一変させています。
どういうことか、筆者は、『罪悪感や罪にさいなまれる痛みに苦しみ続けないで、文化や風習など安いプライドは吐き捨て人類が信じ合う世界に書き換えみんなで幸せになろう!それは今しかありません』という意味に感じました。
人類は、文化や風習を護ることよりも、お互いが差別やいじめをせずに信じ合い許し合いながら誰も傷つけないことが大事なのであるという教えであり、それを実行するのは今しかないんだよと、最後に一つの救いとして諭しているのでしょう。
もちろん、この解釈は、筆者の独断と偏見によるものであり、また違った解釈もあるのかもしれませんが、少なくとも1つの心理であることは事実。
また、解釈が多少食い違うとしても、escalateが深い闇と気付き・発見・教え・救いを多くの音楽ファンに与えていることも事実だと思います。
ぜひ、この壮大なテーマを自分なりに考えながら、Aimerさんが歌うescalateの世界観を体感してみてください。
きっと何かしらの新たな発見を目のあたりにすることと思いますよ。
『escalate』の曲調・音楽性
先程解説したように、明らかに闇色満載な重たい情景が綴られた歌詞の世界感だけに、escalateの曲調・音楽性はかなりダークな印象がうかがえるのかと考えるAimerさんファンも少なくないのではないでしょうか。
しかし、実際にはダークな印象というよりシックで疾走感のある曲調・音楽性を持っているように感じ、実にクールで格好良い印象を与えています。
では、その理由の推察も含め、『escalate』の曲構成から曲調・音楽性を見ていきましょう。
まずは、『escalate』の基本構成は以下の通りです!
イントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→Aメロ’(2番)→Bメロ→サビ→間奏→サビ(エンド)
これまた、基本に忠実な構成ですよね。
てっきりトリッキーな構成(前サビや2番のAメロ・Bメロを完全に飛ばすとか…)にしてくるのかと思いきや、決してそんなことはありませんでした。
ただ、escalateは、イントロから細部に渡るまでいくつかの和音をストリングス系で繰り返し響かせベース音のような働きをさせている点が、他の楽曲と少し異なり、疾走感・緊迫感を生む演出効果をもたらしています。
では、なぜ、このような演出を『escalate』は施しているのでしょうか?
あくまで筆者の見解でお話しますと、おそらく、escalateの描く世界観をよりリアルに体感できるようにする工夫の一つだったのだと思われます。
先程、歌詞の意味・世界観の解説において、人類が犯してしまう命への冒涜という大罪から逃れたい気持ちと懺悔の気持ちからくる不安感や恐怖心が描かれていると解説しました。
物語としてもかなり壮大なテーマだというのに、曲構成がシンプルで、曲調の工夫がなかったとしたら、何かピンボケしたような感じになってしまいかねません。
特に1番の歌詞は、かなり闇が深く緊迫した世界観が展開されています。
それだけに、聴き手が楽曲の世界観に入り込めるように、緊張感・不安感などを煽る演出の一つとして、イントロ部から、ストリングス系で複数の和音を繰返し奏でベースのような働きをさせたのだと思われます。
とはいえ、大音量でストリングスを響かせ続けてしまったら、メロディまでもぶち壊れてしまいますよね。
あくまで、程よいスパイスとして、注意して聴いている人が気づく程度に音量は抑え、さり気なく紛れ込ませることで、何気なく聴いている人も知らない間にescalateが繰り出す壮大なテーマに没入させようとしているのでしょう。
あと、シンセ・ストリングス系の音の挿入とは別に、Aimerさんのハスキーな声質を使った工夫も、一つの曲調・音楽性としてescalateに取り入れられています。
それは、ハスキーで低音ボイスだから醸し出される暗さと、抑揚を重ねることで楽曲の世界観の広がりを魅せるといった工夫です。
何度も言いますが、このescalateは、壮大な闇を一つのテーマに描いた作品です。
だからこそ、Aメロの出だしなどでは、Aimerさんが得意とする低音ボイスでスタートし、徐々に盛り上がりを見せつつ、サビでは1つの単語の語尾に抑揚を入れ音の広がりを魅せるという工夫が施されています。
音による演出、歌い方の工夫など、細部にまで緻密なこだわりを魅せているからこそ、これほどまでの壮大なテーマを描く楽曲であっても『escalate』は多くのファンから高い支持を受けているのでしょうね。
本当に、今回『escalate』という楽曲をじっくり解説してみて、一音目からAimerサウンドの真骨頂を魅せつけられたと頭が下がる思いがしました。
まさに珠玉と言うにふさわしいAimerさんの魅力が存分に詰まった素晴らしい楽曲へと仕上がっていますので、ぜひ歌詞の世界観だけでなく、音への緻密なこだわりも存分に体感しながら『escalate』が描く音の世界感を堪能してくださいね。
『escalate』がもたらす現代社会への教え・哲学
最後に、今回ご紹介したAimerさんの『escalate』という楽曲が、現代社会にどのような教えや哲学をもたらすのか、一つのまとめとしてお話しておきます。
escalateは、紛争や戦争など身勝手故に引き起こされた悪行によって奪われた命に対する罪の意識(懺悔や恐怖心など)から来る螺旋のごとく続く苦しみと、それらから解放されるために今人類がなすべきことが描かれているように思います。
その考えは、先程から説明している通りです。
そして、この紛争や戦争によって人命を奪い続けてきた罪は、現代社会においても変わることなく繰り返されています。
その最たるものは、ウクライナ戦争ではないでしょうか。
ロシアの勝手な言い分によってウクライナ戦争という悲劇が引き起こされ、多くの犠牲が出てしまいました。
ロシア兵の中には、戦争であったとしても人命を奪ったことへの罪に苛まれている人もいることでしょう。
それぞれが抱え持つ文化や風習・アイデンティティを捨て去り、お互いに許し合える社会を築くことが出来れば、ウクライナ戦争は起こっていなかったはずであり、それができていない現状がリアルな今の姿なのです。
そんな悲劇を現代社会でこれ以上引き起こさないためにも、無駄なプライドや文化風習など切り捨て、お互いに尊重し許し合える絆を持てるよう変えていくべきであると、escalateは教えてくれているように思われます。
まぁ、所詮筆者の勝手な思い上がりと言われたらそれまでですが、少なくとも、何かを考える大きなきっかけとなっていることには違いありません。
ぜひ、Aimerさんの歌うescalateの歌詞の意味や世界観・曲調・音楽性を感じながら、私達一人ひとりが、赦せないのではなく許し合う社会にするために必要なものを考える切っ掛けとなってくれることを切に願う次第です。
まとめ
今回は、Aimerさんの新曲『escalate』をテーマとし、筆者の見解ではありますが、歌詞の意味・世界観、曲調・音楽性を中心に掘り下げて解説させていただきました。
escalateは、Aimerさんの原点ともいうべき闇との共有を存分に楽しむことのできる珠玉も名曲です。
さらに、テーマも壮大で、現代社会における闇をどの様に変えていくのが好ましいのか、いろいろ考えさせる部分も見受けられます。
ぜひ、escalateを聴きながら、それぞれの抱える闇(罪・カルマ)とどの様に対峙すべきなのか、それを考える一つの切っ掛けとしていただけたら幸いです。