アニメ『銀河英雄伝説Die Neue These第3章激突』のテーマソングとして起用され、女性アーティストSennaRinさんのブレイクに大きく影響をもたらした『melt』。
作曲家・澤野弘之氏によるボーカルプロジェクト『SawanoHiroyuki[nZk]』作品の一つとしても『melt』は人気を博した一曲ともいえますね。
さて、SennaRinさんの楽曲『melt』ですが、彼女の代表曲とも言われる作品だけあって壮大なスケールを感じさせる魅力的な楽曲に仕上がっています。
そこで、本記事では、筆者の見解ではありますが、この『melt』の歌詞の意味・世界観や曲調・音楽性を解説し、楽曲の持つ大きな魅力をたっぷりご紹介していきます。
SennaRin『melt』のwiki風概要
アニメ『銀河英雄伝説Die Neue These第3章激突』のテーマソングにも起用されたSennaRinさんの歌う『melt』の簡単なwiki風概要(楽曲紹介)はこちらです!
楽曲名:melt(めると)
アーティスト:SennaRin
リリース:2022年4月13日
収録形態:EP『Dignified』にて収録
作詞:茜雫凛(SennaRin)・cAnON.(山本華音)・澤野弘之
作曲:澤野弘之
レーベル:Sony Music Labels Inc.
タイアップ:アニメ『銀河英雄伝説Die Neue These第3章激突』テーマソング
まさにアニメの世界観を体現したような宇宙に広がる壮大な音域を醸し出すSennaRinさんの楽曲『melt』。
冒頭からお伝えしている通り、本楽曲は、アニメ映画『銀河英雄伝説Die Neue These第3章激突』のテーマソングとして起用されていますが、SennaRinさんのシンフォニック感満載な声質が非常にマッチした楽曲に仕上がっています。
時に柔らかく慈愛に満ち、それでいて時に広大に響き渡る音の世界観が実に心地よく、まるでオーケストラを聴いているかのような壮大なスケール感は半端ありません。
音の構成に関しては結構シンプルですがメリハリ・抑揚もしっかりついていてすっと心に響いてきますし、歌詞もいろんな解釈ができて実にユニーク。
アニメ『銀河英雄伝説』シリーズは、宇宙を舞台に
- 銀河統一を野望とするラインハルト・フォン・ローエングラム要する銀河帝国軍
- 民主共和制の理念を第一とし、政権よりも平和を求めるヤン・ウェンリー要する自由惑星同盟軍
- 銀河帝国軍・自由惑星同盟軍の争いを良いことに権力をかっさらおうと画策するルビンスキー要する第三勢力フェザーン自治領
の三つ巴戦争を描いた物語となっていますが、やはり三者三様の考え方があってそれぞれの視点で捉え方・価値観は大きく異なっています。
SennaRinさんの『melt』は、
- 自愛に満ちた救いの光をもたらす神のような動きとそれを求め救われる人物を描いた
- 自身に隠された闇を光によって暴かれるのではないかと不安に満ちた主人公視点の物語を描いている
といったような、二つの捉え方ができる楽曲です。
詳しくは、後ほど歌詞の世界観や意味合い、曲調・音楽性を含め独自の視点で解説していきますが、いずれにしてもいろんな捉え方ができる世界観の広大さがmeltの最大の魅力と言って良いのかもしれません。
実に奥行きの広い楽曲なので、じっくり味わうように『melt』を何度も聴き入ってほしいなと思いますね。
SennaRinが歌う『melt』が描く光景とは?
具体的な歌詞の意味合いや曲調・音楽性についても解説・考察については、後ほどたっぷりお話していきますが、まずは、その前に、SennaRinさんが歌う『melt』の描く世界観に軽く触れていきたいと思います。
まず、筆者が『melt』を聴いた第一印象は、芥川龍之介の有名小説『蜘蛛の糸』に近い世界観を描いているのかなと感じました。
芥川龍之介作『蜘蛛の糸』とは、地獄で苦しむある男に一筋の『蜘蛛の糸』と銘打つ光が差し出された物語を描いた作品と、筆者は記憶しています。
meltも腐敗した世界から抜け出す一筋の光が照らされた主人公の心情を描いているように感じたのです。
ただ、それはあくまで第一印象での筆者の感想に過ぎませんでした。
何度も繰り返してみるうちに、光を差し出された主人公というよりは、光を差し出されたことにより闇が明かされてしまった主人公の心情が描かれているのかと、ハッとさせられます。
初めて聴いたときの印象とは真逆の内容がビシバシと心に突き刺さっていく…
その不思議な体験が一つの魅力として今回の『melt』は脳裏にこびりついてきたというのが、正直な今の感想でしょうか…
壮大なスケールという点は、先程述べた通り変わりありません。
しかし、聴いた人や捉え方によってその解釈が大きく変わっていくというなんとも不思議な感覚を受ける楽曲であるなと、meltに関してそのような心情を今は抱いています。
何故、解釈が180度変わるの?
出典:https://origin.daily.co.jp/
人それぞれ価値観も考え方も異なりますし、人によって多少楽曲の感じ方は変わったりすると思いますが、同じ人が何回か聴いただけで180度異なる印象を抱くというのは結構稀有なことではないでしょうか。
先程、お話したようにSennaRinさんの歌う『melt』という楽曲は、そんな稀有な一曲であり、聴くたびに捉え方が180度変わってしまう壮大な楽曲なのです。
では、なぜ、聴くたびに捉え方が180度変わってしまうのでしょうか?
一つは、楽曲のテーマというかスケールが果てしなく広大であることが一因しているような気がします。
広大さといえば、聞こえが良いかもしれませんが、決していい意味だけでなくて、SennaRinさんのmeltはいろんな意味合いで広大です。
端的に言えば、闇であもあり光でもあるという点では、宇宙のようなスケール感のある楽曲なので、広範囲の状況にマッチした楽曲として心に響いてくることでしょう。
そして、その演出として施されているのが、SennaRinさんのシンフォニックな声質とオーケストラばりのゆったりながら心を揺さぶる音の構成。
同じSennaRinさんの楽曲でも最果てと聴き比べてたらわかりますが、最果てが少しエッジを利かせた感じに仕上がっているのに対して、meltは時に柔らかくふわっと包み込むような心地よさを感じさせてくれます。
これは、曲調・音楽性のところでも触れる話ですが、Aメロでは静寂をもたらすかのように歌っているかと思いきや、サビではガラリと様相を変えて優しく包み込む慈愛を感じさせ、そういったところでもいろんな解釈が得られるのでしょう。
二つ目は、歌詞の巧妙さにあるのかもしれませんが、ここについては、後ほど歌詞の意味合い・世界観のところで兎より掘り下げて解説していきますので、一旦割愛させてください。
いずれにしても様々な要素が絡み合っているがゆえに、SennaRinさんのmeltは、同じ人物であっても聴いた状況によって解釈が変わるという稀有な楽曲として非常に魅力を感じさせてくれるのです。
ここにMVのリンクも貼っておきますので、みなさんも一度聴いてみてくださいね。
※SennaRin『melt』のMVはこちらです!
『melt』の歌詞の意味や世界観とは?
さて、ここからは、より掘り下げてSennaRinさんの『melt』を歌詞パートと曲パートに分けて筆者独自の見解で解説していきます。
では、早速、歌詞パートから意味や世界観を掘り下げて見ていきましょう。
光を怖がる描写が見えた1番の歌詞の意味・世界観
SennaRinさんのmeltをメロディ中心で初めて聴いた時、筆者自身慈愛に満ちた楽曲と感じていたのですが、実は、先程も少し触れた通り、1番の歌詞の巧妙さが一気に逆の視点での捉え方を聴き手に与えます。
具体的にどういうことかというと、まず、このmeltに登場する主人公は、まさに芥川龍之介の蜘蛛の糸ばりに、光を照らされているのですが、その事に対して恐怖心を抱いています。
例えば、Aメロ冒頭の歌詞がこちら!
『優しさには見えている
僕らが強くないこと』『知らないフリで隠した
その手には 明日(未来)を握っている』
すごく意味深な歌詞なのですが、最後の明日(未来)を握っているというフレーズから、筆者は初めてこの曲を聴いた時に、メロディと合わさって光を差し伸べる何かを感じたのです。
ただ、よくよく歌詞の意味を解析してみると、主人公はただ弱いだけの人物なのに、何故か光を照らされ優しい人物と誤解され、闇が暴かれるのを恐れているかのように感じてしまうのです。
それを決定づけたフレーズが、三行目にある『知らないフリで隠した』に凝縮されているのではないでしょうか。
そもそも光が癒やしならば何も隠す必要はありませんよね。
でも主人公は、知らないふりして隠しているわけですが『一体何を隠した?』と感じるのは筆者だけじゃないと思います。
そこで考えられることは一つ、誰しも自分の心に持つ闇を隠していたということではないかと言うこと…
そして、その闇を光で照らされることによって明かされることを主人公は恐れていたのではないかと…
つまり、素の自分を世間にさらされることが嫌だと、meltの1番の歌詞で綴られているのだと思うのです。
誰しも大なり小なり闇を抱えているものですが、それが暴露されてしまうとやっぱり恥ずかしさが勝ってしまう…
光を当てることで手を差し伸べたと言うより、光によって闇が暴かれそうになり恥ずかしさでいっぱいという心情が歌詞に込められていたのでしょうね。
2番の歌詞で綴られる真逆の解釈とは?
meltの2番の歌詞についてですが、序盤は闇を感じさせる歌詞の構成に変わりありません。
こちらが、2番Aメロ冒頭の歌詞です!
『優しさを恐れてる
美しい世界じゃないと』『歪みをなぞっていても
この声を誤魔化せやしない』
2番冒頭の歌詞を見ていくと、先程お話していた光に照らされて闇が明かされることを恐れている主人公の心情が痛いほど伝わってきます。
誰しも決して100%清らかな心を持っているわけではなく、どこかしらいびつで歪んだ心も持ち合わせているので、そこをさらされてしまうのは、やはり恥ずかしいのでしょうね。
しかし、闇をさらされることに対する恐怖心が綴られているのは2番のサビ前までで、サビに入った途端に、急に光=癒やしといった感情が綴られて行くのです。
気になる2番サビの歌詞がこちらです!
『夜空の冷たい星よ
この痛みを照らして抱いて』『止め処なく溢れる悲しさも
形を変えて輝いていくだろう』
2番Bメロまでの歌詞では闇が暴かれるのが怖いから照らさないでと言いながらも、このサビでは、星あかりとは言えど一筋の光に照らされて痛みを癒やすかのように抱きしめてくれと願っている印象さえうかがえる歌詞が綴られている印象…
もちろん癒やせとは書かれていませんが、その代わりに、止め処なく溢れる悲しみも形を変えて輝くとあるわけですから、結局、主人公は光に照らされることも一方で求めているのではと思えてなりません。
1番では闇を暴かないでと言いながら2番サビで光を当ててほしいという、人の感情が抱く2面性がmeltでは描かれている…
だからこそ、聴き手の状況次第では捉え方が180度変わるというわけ。
先程触れた歌詞の巧妙さがようやく2番サビで明らかになったと言えるのでしょうね。
確かに人は弱いものであり、誰しも大なり小なり闇を抱えていますし、一方では傷つきやすく光を当てて癒やしてほしいと願う身勝手なところも持ち合わせています。
だからこそ、時に判断を間違えて戦争なんて恐ろしい行為に走ってしまうのかもしれませんが、そういった人間の弱さや愚かさも含めてmeltは描かれたのではないでしょうか。
この楽曲は、宇宙戦争を描いたアニメ『銀河英雄伝説Die Neue These第3章激突』のテーマソングとして手掛けられています。
そんな世界観を描くための大いなる演出であったと考えると、すべて合点がいくきがします。
それぞれの立場で、時に傲慢ながら時に弱さや卑しさを滲み出しながらも戦争という大きな戦いに挑む戦士たち…
そのリアルが、meltを通じて描かれているのだと思うと、良くも悪くも『銀河英雄伝説Die Neue These第3章激突』が、さらに味わい深い作品として見ることができるようなそんな気がします。
ラストで描かれる英語歌詞の意味は?
さて、話を戻しますが、2番サビ後半と全体の歌詞のラストで、以下のような英語歌詞が綴られています。
『You’re the only one, I descry
We’ve only just begun to stand by』『You’re the only one, I descry
We’ve only just begun to stand by』
いずれも、2行で一つの文章となり繰り返されているだけなので、2行目までを直訳してみたのですが、またなんとも言えず解釈しづらい意味でした。
それが、
『あなただけですよ。
まだまだ待機は始まったばかりです』
といった意味の文章…
本当に意味不明ですよね。笑
ただ、これはあくまで英語表記の歌詞を直訳しただけの話であり、分解して意訳していくとなんとも意味深な歌詞のように筆者は感じ取れました。
では、この歌詞が何を意図しているのかもう少し掘り下げてみましょう。
まず、『You’re the only one』の部分の訳は、『あなただけ』という風に訳することができます。
続いて『I descry』の部分を直訳していくと『私は説明する』という役になります。
つまり、『(私は)あなただけなのだと説明しています』という訳することができるのです。
ここで、肝心なのは何に対してあなただけであると言っているのかというところではないでしょうか。
それが後半部で綴られているのかなと筆者は感じました。
さて、気になる後半部ですが、『We’ve only just begun』の訳が『私たちは待っている』になり、『to stand by』が待機することをという訳と直訳されます。
ただ待っていることを待っているって意味不明ですよね。
これらの文章を全体的に翻訳させると、『まだまだ待機は始まったばかりです』と訳されますが、おそらく、『just begun』が始まりと訳されてしまった結果なのかもしれません。
まぁ、いずれにしてもまたもや意味不明な訳になってしまうのです。
そこで筆者もない知恵を絞りいろいろ考えました。
更に分解して後半の『stand by』というフレーズの意訳を調べてみると『傍観する』という意味を発見。
ここで、私たちはあなたを傍観しながら待っていると意訳され、さらにわかりやすく『私たちはあなたを常に見守っている』という訳になるのではないかと考えたのです。
さらに、ここでいう私達というのはあなた(主人公)を覆う光と影ではないかと考えました。
つまり、
『光は時に癒やしを与え時に闇を暴くものであり、逆に影は暗く不安を募らせるけど自身の闇を覆い隠すことができるもので、常にあなた(主人公)につきまとっているものであり、あなた自身を見守り傍観しているものなのです。』
というような訳であるのではないかと思ったというわけ。
正直、かなり複雑なニュアンスではありますが、これなら、meltが光と影をテーマに描かれた意図も十分理解できますし、いろんな解釈ができるという意味合いも理解できるような気がしますね。
筆者自身、英語はそれほど得意ではありませんので、ぜひ、この英語の意訳も含め、みなさんもSennaRinさんの『melt』を聴きながら、それぞれの解釈で歌詞の意味・世界観を堪能してみてくださいね。
『melt』が奏でる曲調・音楽性とは?
出典:https://www.anime-recorder.com/
壮大なスケールを演出しながらも、決してそこで終わりではなく、AdoさんやAimerさんなど今世界に誇るトップアーティストも手掛ける手法が随所に散りばめられているSennaRinさんの『melt』。
もちろん、この『melt』という楽曲は、SennaRinさんのプロデュースを手掛けた作曲家・澤野弘之さんのボーカル中心となる楽曲プロジェクト『SawanoHiroyuki[nZk]』がバックにあってこその楽曲であることは忘れてはいけません。
SennaRinさんのハスキーでシンフォニックな『シンフォニックボイス』と澤野弘之さんが手掛けるサウンドが見事に融合し、壮大な宇宙観を描いた楽曲として『melt』が誕生していることをまず理解した上で聴いてみてください。
その上で、今流行している手法なども筆者なりに解析しご紹介していきますので、ぜひ、その一つ一つを体感しながら『melt』の曲調・音楽性を楽しんでいただけたら幸いです。
では、早速、基本となる曲構成を見てていきましょう。
まず、基本の構成は、簡単にまとめると
短いイントロ→Aメロ→Bメロ→サビ→(2番へ)→Aメロ→Bメロ→サビ→サビ‘→サビ
といった構成となっています。
この構成を見ていただければ分かる通り、作曲を学ぶ時に目にするような基本要素で形成されたほぼシンプルな楽曲構成と言えるでしょう。
ただし、必ずしも基本通りというわけではなく、2番終了後にサビの前半部を短く入れて、更に畳み掛けるかのように一気にサビを重ね盛り上げるところは、ちょっとしたアレンジとなっていて心地よく聴こえますね。
さて、この基本構成を踏まえつつ、meltを更に掘り下げていくわけですが、みなさんは、一通り聴いてみてふと感じることは有りませんか?
筆者も、LiSAさんの『一斉の喝采』の解説記事でも述べたことなんですが、そこでも使われたあるスパイスが大いに盛り込まれていました。
※LiSAさんの『一斉の喝采』楽曲解説記事が気になる方は、『LiSA『一斉ノ喝采』の歌詞が伝える意味や音楽性を徹底考察』の記事のリンクを貼っておきますので、ぜひ御覧くださいね。
出典:https://floor-net.jp/l
話を戻しますが、SennaRinさんの『melt』やLiSAさんの『一斉の喝采』に盛り込まれたあるスパイスとは一体何か?
それは、一言でいうと『静寂から喧騒への転換』です。
LiSAさんの一斉の喝采に関して、筆者は、『スローテンポに入りながらもサビで一気に盛り上げていく』というようなニュアンスでご紹介いたしましたが、今回ご紹介するmeltもそれと同じ構図を描いています。
イントロでは、いくつかの和音をただ淡々と奏でるだけですぐにAメロに入っていますが、Aメロ・Bメロでもその和音をベースとしながらSennaRinさんがメロディを歌っていくだけで、本当の盛り上がりをすべてサビまで溜め込んでいます。
そして、サビでは壮大なスケールを感じさせるため、シンフォニック全開で楽曲そのものを盛り上げていくのです。
ただ、この盛り上げ方は、一斉の喝采とはまるで異なり、高音ながらゆったりとしたリズムでオーケストラさながらのサウンドを体感させてくれるので、インパクトというよりは広がり重視なんだろうなと思われます。
その理由は、みなさんも察しがつくことと思いますが、この楽曲『melt』が宇宙を舞台とするアニメ『銀河英雄伝説Die Neue These第3章激突』のテーマソングであるがためと言えるでしょうね。
宇宙を舞台に繰り広げられたアニメーション作品を盛り上げるためのテーマソングなのですから、インパクト重視というよりは広大な広がりをもたらす方が好ましく、だからこその演出だったと考えるのが妥当です。
まぁ、いずれにしても、基本に忠実ながらも凝った演出を施し壮大なスケール感を与える演出力には、ただただ感動するばかりで頭が下がる一方です。
ちなみに、この静寂からサビでスパークしていく表現技法は、Adoさんの『永遠のあくる日』でも使われています。
永遠のあくる日では、3拍子を刻みながらも静かに入りサビで大盛りあがりを見せていますよね。
LiSA節と称した静寂からの喧騒は、メロディラインは静かながらサビでロックばりにスパークする手法…
いずれも演出方法は大きく異なりますが、それぞれのスタイルながら『静寂からの喧騒』を上手く演出しているわけです。
さて、話を戻します。
SennaRinさんの歌う『melt』も、他の楽曲同様に『静寂からの喧騒』を、一つの曲調・音楽性として描いていますが、ただそれで終わりではありません。
果てしなく広大な世界観を描きながらも『静寂』を序盤に持ってくることで後に描く『光と影』をより強調させる効果も演出しています。
真っ暗闇の中に光が指すと、ある種まばゆく感じませんか?
逆に光の中に急に影が差し込んできたら、闇とまではいかなくとも暗さを感じませんか?
実は、meltでは、静寂からの喧騒というギャップを音で描くことで、光と闇が強調されています。
それがあのサビのパートによるシンフォニックかつ広大な世界観を描く音のマジックなのです。
シンフォニックなサビとすることで柔らかく包み込むような光と広大な闇を一気に描いてしまう…
そこがまた小憎い演出であり思わず魅了されてしまう大きなポイントと言えるでしょう。
単純に宇宙を描くだけなら多少ど派手な演出を盛り込んでも良いかもしれませんが、今回の一番のテーマが『光と影』であるからこそ、柔らかくも広大さを感じさせるシンフォニックな音の演出が必要だったと言えるでしょうね。
もちろん、この演出を施すには、ヴォーカルを担当するSennaRinさんのハスキーながらシンフォニックな歌声は欠かせません。
時にオーケストラのように、かつ優しく包み込んでくれるそんな音楽だからこそアニメ『銀河英雄伝説Die Neue These第3章激突』にふさわしい楽曲としてSennaRinさんの『melt』が完成しているのだと筆者は考えています。
ぜひテーマソングとして起用されているアニメ『銀河英雄伝説Die Neue These第3章激突』の世界観も思い描きながら、SennaRinさんの『melt』を堪能してみてください。
広大な世界観を描いたmeltを何度も堪能することで、より音楽の世界観が広がり心が満たされていくと思いますよ。
SennaRin『melt』楽曲解説まとめ
今回は、SennaRinさんの歌う『melt』という楽曲を、全体の紹介から、歌詞の意味・世界観、曲調・音楽性を、筆者独自の見解で解析し解説させていただきました。
meltはアニメ『銀河英雄伝説Die Neue These第3章激突』のテーマソングとして手掛けられた楽曲で、広大な世界観とともに描かれる『光と影』が最大の主題となっています。
聴くごとに捉え方も違って感じる事のできる稀有な楽曲であり、改めて人類は光と影を常に纏い、時に柔和で時に闇に孕んだ感情を抱いていることを体感させてくれる楽曲でもあるので、meltを通じてその奥深さをぜひ堪能してみてくださいね。