急激な場面転換や多数見られるラップなど、見どころ満載なアニソンとしてMV配信後から人気殺到のYOASOBIの新曲『アイドル』。
『アイドル』はTVアニメ『推しの子』のOPとして手掛けられた楽曲だけに、タイトルにある『アイドル』をそのままテーマとして描いた斬新な楽曲として人気を博しています。
今回は、そんなYOASOBIの新曲『アイドル』の歌詞の意味や世界観を紐解き、曲調・音楽性の魅力をご紹介しながら、リアルに見られていない斬新なアイドル像の正体や、そんなアイドルに秘められた胸の内も考察していきたいと思います。
YOASOBI『アイドル』のwiki風概要!
原作小説をモデルに楽曲を手掛けながらも、いつもわくわくさせてくれるような斬新なスタイルを提唱してくれる男女混成音楽ユニット『YOASOBI』。
まさにユニット名が指し示すような遊び心満載な新曲『アイドル』が2023年4月12日に音楽配信サービスにてリリースされました。
まずは、そんなYOASOBIの新曲『アイドル』の簡単なwiki風概要を見ていきましょう。
楽曲名:アイドル(あいどる)
アーティスト:YOASOBI
リリース:2023年4月12日
収録形態:19thシングル(表題曲)
作詞・作曲・編曲:Ayase
原作モデル(小説):45510(著:赤坂アカ)
レーベル: YOASOBI
タイアップ:テレビアニメ『【推しの子】』OP
TVアニメ『推しの子』のOPとしてリリースされたYOASOBIの新曲『アイドル』は、きっと多くのファンの方たちが、これまでのYOASOBIにない斬新なサウンドとして支持されていることでしょう。
筆者自身、正直なところYOASOBIからこのようなラップ調のサウンドを聴くことになるとは夢にも思っていませんでした。
確かに機動戦士ガンダム『水星の魔女』OPにも起用された『祝福』など、ロックテイストな楽曲ならいくつかありますが、それとも異なりここまで攻めたラップ調は、筆者が勉強不足でないなら、多分今回が初めて…
ただ、初めてと言っても、YOASOBIが個性を重んじ新たな挑戦をしなかったわけではありません。
祝福ではロックテイストを盛り込み、大正浪漫では時代を彷彿するような超レトロサウンドを取り入れ、さらに、ミスターではアンニュイな音楽をふんだんに取り入れたKPOP調に挑戦するなど、常に新たな挑戦に挑んでいます。
まさに、YOASOBIのサウンドはユニット名が指し示す通り、遊び心・挑戦心を忘れることなく、原作小説を題材とした音楽をベースに日々進化させているわけです。
そして、幾田りらさんのソロ活動においても、この挑戦する姿勢は変わることなくすべての楽曲に反映されています。
特に、その色が濃く映し出されている楽曲を上げるとするならば、スカパラがコラボした2022年7月リリースの『Free Free Free』。
この楽曲は、スカパラの得意とする吹奏楽の要素に、幾田りらさんが後半部で畳み掛けたラップ調と、これまた際立った新要素に幾田りらさんが挑戦した魅力あふれる楽曲です。
実際に『Free Free Free』に関してはYou Tubeでもまだ配信されているので、一度気になる方は聴いてみてください。
※一応、下記にてリンクを貼っておきますね。
ちなみに、『Free Free Free』で幾田りらさんがコラボすることによって、スカパラが得意とする吹奏楽・オーケストラ調の領域を超えて、ジャズ・ボサノバ調への化学変化をもたらし、実に、新たな進化系をもたらした楽曲として完成しました。
そして、このような新たな試みによる化学変化は、今回ご紹介するYOASOBIの新曲『アイドル』にも多分に表れているのです。
YOASOBIのヴォーカルを担当する幾田りらさんは、クリスタルボイスの持ち主として人気を博していますよね。
そのことはYOASOBIファンだけでなく音楽ファンの間では有名な話ですが、彼女の魅力はそれだけではありません。
ときにアンニュイな表情を見せたかと思えば、ときにロックな表情を見せるといった多彩な表情を声で表現できるアーティストとして実に魅力的なのです。
さらに、幾田りらさんは、他の人には真似できない柔らかい歌い口のラップも出来ます。
こういった、魅力をうまく組み合わせて、『1+1=3以上』をもたらす化学変化がYOASOBIの真骨頂であり、新曲『アイドル』もその要素が多大に含まれた素敵な楽曲としてリリースされました。
今回の『アイドル』の目玉はラップにありますが、かなり型破りで俳句や短歌で言うところの字余り的な要素を含ませながら、スピード・テンポ感も緩急をつけた飽きのない音楽として完成されています。
正直、こんな難曲よく歌えるなと、幾田りらさんの歌唱力には脱帽ですし、そんな彼女の歌唱力に信頼を寄せてこれでもかとばかりに難しい構成の楽曲を仕上げるAyaseさんのプロデュース・楽曲制作能力にも脱帽…
本当に才能豊かな二人が揃っているからこそ、『アイドル』はこれまでにない斬新な楽曲として完成されたのだと、筆者は強く感じています。
そして、何度も繰り返して『アイドル』を聴き込んでいくごとに、『YOASOBIの楽曲はどこまで進化を遂げていくのだろうか…』と、ワクワクする気持ちが抑えられなくなってくる自分に遭遇してしまいます。
それだけ、『アイドル』という楽曲は、現時点でのYOASOBIサウンドの究極系を遂げている魅力あふれる斬新な楽曲なので、ぜひ、みなさんも一度試しに聴いてみてくださいね。
『アイドル』がラップソングである理由
出典:https://twitter.com/YOASOBI_staff/
筆者自身、正直なところ、YOASOBIの新曲『アイドル』がTVアニメ『推しの子』のOPとして起用されていることは全く知りませんでした。
それどころか、ただYou Tubeのおすすめ動画に登場した『アイドル』のMVのサムネイルを見て、また何かしらのカヴァーソングを歌っていると思っていたのです。
その感情は、『推しの子』のOPとしてYOASOBIが手掛けた新曲である事を知るその日まで、全く変わることなく、MVを始めてみた時点では、カヴァーソングという印象がより色濃くなったに過ぎません。
それもそのはず…
なにせ、これまでYOASOBIの楽曲では見たこともないラップ調のアイドルソングですからね。笑。
今では、ちゃんとYOASOBIの楽曲として認識しておりますが、それだけ良い意味で異質で、常識の概念をもぶち壊すアイドルソングとしてリリースされているわけです。
では、何故『アイドル』を題材に描かれたアニメ『推しの子』のOPとして手掛けられているにも関わらず、YOASOBIの新曲『アイドル』はラップ調全開の音楽として完成されたのでしょうか?
その理由が気になり筆者も色々調べてみたのですが、具体的なことは明かされることなく、単にラップソングであることを明かしているに過ぎませんでした。
なので、ここからは完全に筆者の考察として、『アイドル』が何故ラップソング全開であるのか紐解いていきます。
まず、何故可愛いアイドルソングでは駄目だったのか?
その答えを考えてみたのですが、その理由として考えられることがいくつかあるように筆者は考察しました。
一つは、Ayaseさんが原作漫画『推しの子』の大ファンで、特別な思いで唯一無二性を強調するために、かわいいアイドルソングを避けた説。
もう一つは、アニメ『推しの子』が、ただアイドルをモチーフにしているだけでなく、『転生×恋愛×サスペンス』の要素を持つダーク系な漫画作品であるために、そもそもかわいいアイドルソングが適していなかった説
ざっくり挙げるとこの二つが主な理由だと思うのですが、それにしても何故突拍子もなくラップに走ったのか気になっちゃいますよね。
あくまで筆者の推測でしかありませんが、推しの子という漫画が、結構バイオレンス要素も盛り込まれた作品であるため、その世界観や攻撃性・唯一無二感を演出するには、畳み掛けるラップがうってつけと考えられたのではと思われます。
少なからずも、『アイドル』の作詞作曲・編曲を手掛けたAyaseさんは、原作漫画『推しの子』に対してファンとして思い入れが強いことは間違いありません。
実際に、Ayaseさん自身が、『漫画の世界観を想像しながら作曲していた』とエピソードを踏まえながら、『推しの子』の大ファンだと公表されています。
なので、原作小説を別途手掛けてもらってから楽曲を手掛けたとしても、『推しの子』の世界観を大切に楽曲を手掛けていることは間違いないでしょう。
その上で、原作漫画『推しの子』の世界観が、『転生×恋愛×サスペンス』要素満載なアイドルが主人公の物語であることを考慮するならば、より攻撃的な楽曲としてラップが多く盛り込まれていたとしてもおかしくありません。
もしかしたら、ラップミュージックという独特なジャンルの音楽を盛り込むことは、今回の『アイドル』には必要不可欠なことだったのかもしれませんよ。
あくまで、『推しの子』の世界観に精通していない筆者なりの憶測なので、どこまで正解なのかわからない部分もありますが、一つの参考として想像しながら『アイドル』という楽曲を聴いてみると、より深い味わいを感じられることでしょう。
YOASOBI『アイドル』のMVのリンクを下記に貼っておきますので、みなさんも、ぜひ一度視聴してみてくださいね。
※YOASOBI『アイドル』のMVのリンクはこちらです!
アイドルの歌詞の意味・世界観
出典:https://www.thefirsttimes.jp/
アイドルをテーマに描かれた漫画『推しの子』のTVアニメ版のOPとして手掛けられたYOASOBIの『アイドル』はストレートに表題にアイドルを用いた斬新な楽曲として高い支持を受けています。
ただ、その斬新さは、歌詞の意味・世界観においても言えることで、『これがアイドルをテーマとした楽曲なのか?』と思うほど衝撃を受けました。
では、具体的に楽曲『アイドル』の歌詞にどんな意味合いや世界観が含まれているのか、早速、筆者の独自見解ではありますが、解説していきますね。
飄々としながら天才的と名乗る新たなアイドルとは?
皆さんは、アイドルと言われてどんな人物像を思い描くでしょうか?
女性アイドルであるならば、ある種、お人形さんのように可愛くて魅力的な人物を、男性アイドルならイケメンの格好良いアイドルを想像する人が多いのではないでしょうか。
もう少し具体的に、女性アイドルで例に挙げるならば、
- 松田聖子さん
- 小泉今日子さん
のような笑顔がチャーミングな可愛い子がその代表格…
とはいえ当然例外は存在します。
そんな例外としてあげられる人物像は、中森明菜さんや平手友梨奈さんのような極端にこの際立つ唯一無二性の高い人物がアイドルとして人気を博している人物像ではないでしょうか。
さて、YOASOBIの『アイドル』が描くアイドルですが、タイプとしては、後者で挙げた唯一無二の独特の個性を持ったアイドル像として描かれているように思われます。
例えば、冒頭ラップパートの歌詞
無敵の笑顔で荒らすメディア
知りたいその秘密ミステリアス
抜けてるとさえ彼女のエリア
完璧で嘘つきな君は
天才的なアイドル様
なんて、かなり尖った今までに類のないアイドル像を物語っていますよね。
笑顔を振りまくアイドルという点では今までと同じかもしれませんが、自信家で完璧主義というのは、ただ笑顔を振りまくのとは180度ことなる唯一無二性を感じさせられます。
ある意味、乃木坂46のメンバーたちのように清純で可愛らしい姿と、元欅坂46の平手友梨奈さんのような虎口でありながら完璧を目指すアイドルがミックスされたような印象も…
それも、いきなり威圧的に惜しげもなく表現していくさまは、まるでかつてのマリー・アントワネットのように、私を神と崇めよと言わんばかりの傲慢さすら感じさせられるのです。
- 自身を天才と謳う有様
- 弱さをも強さに変える完璧主義
- 嘘もいとわない姿
と、過去をも超える最強アイドルの登場にきっとファンは驚いていることでしょうね。
しかし、そんな最強アイドルなのに、中身はミステリアス…
好きな食べ物も好きなタイプ男性も秘密で、のらりくらりとかわしながらも飄々としています。
その様子が、1番Aメロからサビ前までの歌詞のいたるところに表れているのですから実に面白いですね。
例えば、Aメロ後半の歌詞
何を聞かれても
のらりくらり
やその直後のBメロ冒頭の歌詞
そう淡々と
だけど燦々と
見えそうで見えない秘密は蜜の味
なんて、かなり露骨に表現されていますよね。
つまり、YOASOBIが歌う『アイドル』に登場する主人公は、同じアイドルでありながらも、
- かつての松田聖子さんや小泉今日子さん、今で例えるならAKB48や乃木坂46のようなかわいい・きれいなお人形さんタイプの王道アイドル
- かつての中森明菜さんや現代で例えるなら元欅坂46の平手友梨奈さんのような、一芸に飛び抜けた孤高のアイドル
といった要素は持ちながらも、それらの枠に収まらずこれまでに類を見ないようなミステリアスで究極のアイドル像なのです。
飄々としながらも『(私は)天才的』と名乗る姿は、実態を明かすことなく私を神と崇めよと振る舞ったかつてのマリー・アントワネットを彷彿とさせます。
そして、そんな特別で究極のアイドルに、ファンは心酔していくのです。
嘘=愛とは?
YOASOBIが歌う『アイドル』は究極のアイドルを形にした楽曲だと、ここまで説明してきましたが、そもそも究極なんてものが存在するものでしょうか?
大体、人間ななんて個性は人それぞれですが、すべてを叶える神のような存在ではなく、意外と弱さも持ち合わせ脆かったりもします。
『アイドル』で表現されている主人公も所詮は人間であり、結局は究極のアイドル像をファンに見せ続けるために、嘘を突き倒しています。
そんな様子が、1番サビの歌詞にある
その瞳がその言葉が
嘘でもそれは完全なアイ
という歌詞に凝縮されているように思われます。
ようやくここで主人公の名前が判明していますが、アイドルであるアイという人物は、瞳や言葉をで嘘を突き倒しています。
そしてそんな嘘を突き倒しても、アイであることに変わりないと、この歌詞で表現しているわけです。
さて、ここで、アイが付いた嘘がどのように愛と『=(イコール)』の関係になるのか、紐解いてみましょう。
それは、同じく1番サビの歌詞
その笑顔で愛してるで
誰もかれも虜にしていく
で表現されています。
実はこの歌詞の部分は、先程ご紹介した1番サビラストのフレーズ(その瞳がその言葉…のくだり)の直前の歌詞で、嘘という言葉にも掛かったフレーズなのです。
つまり、ファンに向けた笑顔や愛がアイ自身にとっての偽り(嘘)のものであったとしても、その嘘=愛の形でファンを魅了していくという情景が歌われているというわけ。
まさに、完全無欠な究極アイドルである『アイ』にとって嘘=愛であったということが、このサビの歌詞で見えてくるわけです。
確かに、アイドルってファンを笑顔にするのが一つの仕事ではありますが、ある意味、自身に嘘を付き笑顔や愛をばらまくというのも結構しんどい職種なんだなと改めて感じさせられますね。
感情が錯綜するラップパートの歌詞
本来、どんな楽曲においてもだいたい1番→2番というように楽曲が構成されているかと思うのですが、アイドルに関しては、1番・2番という概念は無いように感じます。
というのも1番のサビが終わった直後にいきなりラップパートが登場し猛ラッシュを仕掛けてくるからです。
それも、聴き方によっては実に違和感を覚えるような、主人公の感情なのか、それともファンや周囲の人達の感情なのか掴みづらく錯綜しまくった展開…
では、具体的にどの部分がアイの感情で、どの部分がその他の人たちの感情なのか、考察してみましょう。
まず、アイの感情をどこで表現しているのか探ってみると、最初のラップパートラストの文節
完璧じゃない君は赦せない
自分を許せない
誰よりも強い君以外認めない
と、次のラップパート全部が当てはまるものと考えられます。
ちなみに、今ご紹介した歌詞には、『君は許せない』と第三者視点の発言も見られますがこれにも理由があります。
それは、この前のラップパートの歌詞に掛かりながらも客観的な視点で『アイ』のことを見て、どこか完璧になりきれていない自身に憤っている様子を表すためです。
そして、1つ目のラップパート冒頭の歌詞
はいはいあの子は特別です
我々は花からおまけです
お星さまの引き立て役Bです
で、一見『私は神である、崇めよ!』とファンや周囲の面々を見下したように見せかけながらも、その一方で、客観視しているもう一人の自分に対して、
『お前の思想はゴミみたいなものだからアイドルとしての姿に徹せよ!』
と釘を指しているわけです。
正直、ある種、かなり回りくどい表現ではあるかなと思いましたが、それだけ、
素の自分をもつ一人の『アイ』
と、
アイドルに徹するもう一人の裏の顔を持つ『アイ』
の二つの感情が複雑に交錯している様子を表したかった(しかも目まぐるしく入れ替わっていく…)のだろうと思えてなりません。
前の見出しのところで、なぜ『アイドル』がラップ前回の楽曲なのか?と考察していきましたが、その理由の一つであった『斬新なアイドルの姿』も正解です。
ただ、この目まぐるしい二つの感情を交錯させたアイを表現する手法に用いたのも一つの理由であったと考えると、すべての辻褄があってくるような気がします。
もちろん、本当の理由はAyaseさんしかわかりえませんが、ただ、単純なアイドルソングではない何かであることは、歌詞の意味・世界観を紐解くことで見えてくるような気がした次第です。
もう一人のアイの正体、素の自分とは?
さて、ここまでの解説で、YOASOBIが歌う『アイドル』には、神と崇めよとばかりに完璧主義を貫き通し笑顔の絶えない究極のアイドルと、それとは全く異なるもう一つの人物像が描かれているとお話しました。
では、そのもう一つの人格である、素の表情を持った『アイ』とはどんな人物なのでしょうか?その正体が気になっちゃいますので、早速、『アイドル』の歌詞から紐解いてみましょう。
一つ気になったのは1番サビ前の歌詞
『誰かを好きになることなんて私分からなくてさ』
嘘か本当か知り得ない
そんな言葉に、また一人堕ちる
また好きにさせる
の部分…
皆さん、よ~く考えてみてください!
一人の人間が、人生の中で誰かを好きになることが本当にわからなくなるなんてことそうそうありますか?
もちろん好きにも色々種類はありますし、それがLIKEの好きなのか、LOVEの好きなのか分からない事はあるでしょう。
ただ、好きか嫌いか分からないなんてことが起こりうるのか、そもそも歌詞にあるように誰かを好きになることがわからなくなることがあり得るのか…
よほど何かに感情を麻痺させられていない限り、筆者は起こり得ない現象と考えています。
そして、そのよほどのことこそが、アイドルとしてすべてのファンを愛していると自身に嘘を付き続けた結果なのだと思うのです。
一方、最後のサビの歌詞にある
『等身大でみんなのこと
ちゃんと愛したいから』
と、楽曲の最後に綴られている
君と君にだけは言えずにいたけど
やっと言えた
これは絶対嘘じゃない
愛してる
では、筆者が想像した通り、先程ご紹介した『誰かを好きになることがわからなくなる』という歌詞と相反することを告げています。
何故、この様になるのか…
その理由を紐解くことこそが、もう一人の素の表情を持った『アイ』の正体を紐解くヒントであると筆者は考えています。
もう結論を言っちゃいますね。
つまり、もう一人の素の表情を持った『アイ』とは、ファンを愛し、特定の彼氏を愛している純粋な一人の女性だったわけです。
ただ、普段は、究極のアイドルという『きぐるみ』を着ているせいで、誹謗中傷を繰り返し、『本当にファンなの?』と疑いたくなるような人に対しても嘘の愛を振りまいています。
そのため、『アイ』は、本当の愛なのか嘘の愛なのかわからなくなってしまったのです。
本当は、一人の女性として、好きな彼氏にも、ファンに対しても『愛してる』を言いたいけど、究極のアイドルで居続けるために、嘘の愛と笑顔を振りまかなくてはならず、最後の最後で、やっと愛を言えたと締めくくっているのでしょうね。
正直なところ、今回の『アイドル』の歌詞の意味合いや世界観はかなり理解するのに手を焼く難曲であると思いましたが、それだけ、理解して聴いてみるとスッキリする素晴らしい楽曲です。
ぜひ、二つの人格を持つ『アイドル』を想像しながら、楽曲を聴いて見いてください。
きっと、味わい深い楽曲として、より『アイドル』という楽曲が大好きになっていくことと思いますよ。
アイドルの曲調・音楽性
先程もお話した通り、YOASOBIの新曲『アイドル』の歌詞の意味や世界観を紐解くのはかなり骨が折れましたし、それだけ複雑で難曲であると言える楽曲でしたが、それは曲調・音楽性にも通じる話だと、筆者は考えています。
では、具体的に、『アイドル』の曲調がどれほど複雑で異型なのか、楽曲の基本構成から順に紐解いていきましょう。
まずは、『アイドル』の曲調・基本構成がこちらになります!
冒頭(ラップパートA)→Aメロ→Bメロ→Cメロ→サビ→ラップパートB→ラップパートC→サビB→ラップパートB→Cメロ→サビ(ラスト)
あくまで厳密に区切った上で、筆者が理解している限りの基本構成なので、もう少しざっくり解釈を変えれば、『1番→2番→3番(2番以降ラップ投入)』でまとめられるかもしれません。
また、筆者が位置づけているAメロ・Bメロのところは、他の方はAメロとしてまとめて紹介されている方もいらっしゃいますが、リズム感がかなり違って聴こえてくるので、あえてAメロ・Bメロに区分しています。
筆者の解析だとかなり厳密に分けているので、それは違うと言われるかもしれませんが、そこは多少大目に見ていただければ幸いです。
まぁ、少なからず、『アイドル』が他に見られるオーソドックスな楽曲の基本構成とはまるで異なる異質な楽曲であることは間違いありません…
さて、話を戻しますが、この楽曲の凄いところは、とにかく奇想天外なことをやりながらもそれをさらっと違和感なく自然に展開させていくところにあります。
冒頭から軽いジャブのようにラップを織り交ぜて来たかと思いきや、本格的なラップパートに入ったときの急落な転調と、何から何まで異色づくしです。
そして、何よりも驚かされたのは、楽曲を構成するメロディラインで、ギターや、ストリングス系といった楽器などを多用するはずが、幾田りらさんのヴォーカルとリズムを刻むドラム・ベースが主軸になっている点。
もちろん、ギターなどの音がまったくないわけじゃないんですが、やはりラップを冒頭に持ってきたことも影響され、リズムとヴォーカルがより強調された印象が拭えません。
おそらく、YOASOBIとしては、特別な演出(アイドルの神格化とか…)なのか、それとも緊張やドキドキ感を煽ろうする演出の一つと考えてのことだと思うのですが、普通これをやると大抵が支離滅裂になり楽曲としてのまとまりを欠きます。
それを、ここまでアグレッシブに責め立てる音楽としてさらっと展開していくわけですから、本当に、YOASOBIにはただただ頭が下がる思いです。
さて、また話を戻しますが、『アイドル』という楽曲は、歌詞だけでなく楽曲も複雑で世界観をつかむのに骨が折れるとお話しましたが、それは、Ayaseさんの『やばい曲が出来た』というコメントからも十二分に受け取れます。
では、何故、YOASOBIが『アイドル』をここまで複雑な楽曲に創り上げていったのでしょうか?
それは、先程歌詞の解説でも少し触れましたが、アイというアイドルの二面性の揺れ動きを巧みに表現したかったからなのかもしれません。
- マリー・アントワネットのように我を神と崇めよと言わんばかりの神格化サれた究極アイドル
- 純粋にファンを愛し好きな人を愛し一人の女性として生きていきたい素の自分
YOASOBIの『アイドル』に登場する主人公『アイ』はこの二つの人格を行ったり来たりしてさまよっている感じです。
そんな心情を、ドキドキ感マックスのラップを盛り込んだビートサウンドとして展開されたのでしょう。
二つの人格を行ったり来たりする情景は、ラップパートでも表現されていました。
ラップパートの『はいはいあの子は特別です』の部分から『すべてがあの子のおかげなわけが無い』までのパートとそれ以降(洒落臭いから始まるパート)とで、リズムが一段階変わっていることに気づかれましたでしょうか?
実は、アイドル時と別にもう一つの人格を持つ『アイ』は、神格化されるアイドルの自分をどこか嫌っていたように思います。
その心情として、妬み嫉みという言葉まで使ってラップ調で揺さぶりを欠けた表現を施された…
ところが、やがて神格化したもう一人の自分が目覚め素の自分を支配していくのです。
その移り変わりとして、1つ目のラップパートラスト(完璧じゃない~の歌詞の部分)に入る前の段階(洒落臭いから始まる部分)で更にギアを挙げてリズムを変える演出を施してきたのではないでしょうか。
そのように考えると、YOASOBIがとんでもない音のマジックを使い、壮大な物語を描いてきたことが想像出来ます。
歌詞の意味合い・世界観でもすごい演出だったと感じましたが、曲調・音楽性に置いてもスケールが壮大であることがうかがえ、ただただ解釈するのに頭を悩ませてくれるわけです。
複雑だけど味わい深い唯一無二の音楽として、YOASOBIの新曲『アイドル』は完成していると筆者は感じています。
ぜひ、その音の味わい深さも存分に体感していただけたら幸いです。
『アイドル』が伝えようとしたメッセージとは?
出典:https://twitter.com/YOASOBI_staff/
一部答えが出ている感もありますが、最後に、YOASOBIが歌う『アイドル』がどのようなメッセージを伝えようとしたのか、筆者なりの考察を落としておきます。
『アイドル』に登場する主人公『アイ』は
- 神格化した究極アイドル
- どこにでもいるようなピュアに愛したいと考える一人の女性
という二つの人格を持っていて、その二つの人格に対する揺れ動きが一つの世界観として描かれていました。
と、ここまでは今まで解説してきた通りですが、この話ってリアルな世界のアイドルたちにも相通じることなのかなと筆者は考えています。
例えば、昨年末頃に熱愛報道が報じられ、けじめとしてAKB48グループを卒業することとなった岡田奈々さんもそんな一人と言えるでしょう。
確かに、岡田奈々さんは、恋愛禁止とされていたAKB48グループで中途半端に恋愛に走ることを良しとしていませんでした。
しかし、一方では恋する気持ちを完全に捨てたわけではなく、だからこそ熱愛報道だってあったわけです。
きっと、岡田奈々さんの中でアイドルとしてファンに触れ合う姿と、一人の女性として恋する気持ちを大切にしたいと考える姿と、その間で揺れ動いていたはずです。
そんな中、熱愛報道を皮切りに『裏切り者』と心無い人達から罵倒されてしまったのですから心情おだやかではありませんよね。
筆者自身、この一件に対して『人権侵害も甚だしい』と怒り心頭でしたが、そんな意見はごく少数…
『アイドル=偶像』を盾にされ、アイドルは恋愛なんてしちゃいけない!好きでアイドルやるなら偶像でありつづけろ!それが常識だと罵られる一方でした。
こんな人権侵害を許容する世の中を形成して良いのでしょうか?
そもそも、私たちはそれぞれの両親が愛し合い、その結果生まれてきた命に違いありません。
果たしてこの世のアイドルファンという方たちの一割でもそのことをちゃんと理解している人がいるでしょうか?
厳しいことを言うようで申し訳ありませんが、筆者は1割どころか1%いたら御の字だと考えています。
そして、最悪、恋愛による罵倒を理由にアイドルが自死してしまうなんてことも十分ありえるとすら危惧しています。
私達だって、仕事もしていますし、その中で生命を育み結婚して子供を生むこともあります。
命のバトンを継承してきている私達人類が、アイドルだけ偶像を盾に人権を奪っていいものでしょうか?
そんな事されたら『アイ』のように嘘つきロボット化されてしまい、挙句の果てに『誰かを愛すること私わからなくてさ…』というようなセリフを吐かせてしまいかねません。
そんな不幸をファンが望むというのであれば、それこそ大問題!
まるで、かつてフランス国民の生命をも脅かしてまで強欲にまみれ、結果としてフランス革命によって命を奪われることとなったマリー・アントワネットそのものだと思いますよ。
好きと思うアイドルに、私達多くの人間たちは、幾度も心を救われてきたはずですし、そんなアイドルが別の幸せも求めるならば、その事も含めて応援するのがファンだと筆者は考えています。
もちろん、あなたの人生を犠牲にしてまで応援しろとは言いません。
できる範疇でグッズも購入すれば良いし、無理なら購入しなくてもいい!
今の時代You Tubeやtwitterなどアイドルたちとつながるツールはいくらでもあるわけだから、できる範囲で繋がり心からアイドルたちの幸せを願い応援してあげればそれでいい…
そのことをちゃんと理解してほしいというメッセージが、YOASOBIの『アイドル』に込められているのではないでしょうか。
最後にかなり辛辣な話をしましたが、それだけ、今のアイドル業界は深刻であるように思います。
言葉にするのがおぞましいほど、一部のアイドル界隈で事件も起こっていますし、その被害者が時を超えて異議を申し出ているなんてことも…
本当に人類としてあってはならないことが許容されている時代だけに、どうか、アイドルたちの恋愛もちゃんと応援してあげてほしいと願うばかりです。
YOASOBI『アイドル』のまとめ
今回は、YOASOBIの新曲『アイドル』について、その歌詞の意味や世界観、曲調・音楽性を紐解きながら、その裏にあるメッセージを考察してみました。
あくまで、今回の意見はすべて筆者個人の一つの意見に過ぎませんが、ただアイドルが偶像を盾に人権を奪われているのは明白。
最悪、『アイドル』の主人公『アイ』のように完璧な究極アイドルを目指す中、誰かを愛することがわからなくなる地獄絵巻に陥ることも…
そんな事にならないようにラップという激しいサウンドに乗せてメッセージを紡いだとも思うだけに、何かファンが考えるきっかけになればと思う次第です。